来客用の部屋は和室にしますか?

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来客用の部屋は和室?

間取りの打ち合わせをしている時、よく出てくるご要望。

「来客用のための和室がほしいんです。」

来客というのは、遠方に限らずご両親が来られる時に作っておきたいと言うもの。

せっかく、新築の住まいをつくる、しかも最近は建築資金としてご両親からの援助が多いのも事実で、孫の顔も見に来てほしいという期待も込めて、泊まってゆっくしてもらいたい、と思うのも当然です。

「今はどうされているのですか?」

とお聞きすると、狭くて泊まれる部屋がないからなかなか来てもらいづらくて・・・。

 

その一部屋のお値段は?!

ここで、ご両親が泊まられることを想定して6畳の和室としてみましょう。

一室6畳つまり3坪分の部屋を作るのに、寝具を入れる押し入れも必要でしょうがとりあえず3坪の建築費を算定してみましょう。
土地の価格は場所によって差がありますが、私が住んでいる京都は、土地の値段が街の規模の割に高く平均して坪80万円くらいはします。

3坪分で240万円 。そこに、部屋をつくるので建築費として、こちらも仕様によって当然差が出ますが、単純に坪70万円でつくるとすると210万円。

合計で来客用6帖の和室のお値段、450万円!

 高いですか?安いですか?

ご両親が年に何度来られるかは分かりませんが、年2回来られて2、3泊されるとして、年間6泊程度。

さて、あなたなら、その和室だけのために450万円払いますか?

 

その和室の代わりに何ができる値段なのか?

ちょっと別の発想をしてみましょう。

おじいちゃん、おばあちゃんと子供2人を連れて家族旅行に行ったとします。 温泉でちょっとぜいたくして宿をとって、交通費も含めて20万円もあれば、まあまあのところに行けますよね。

450万円あれば22回、年2回とすれば11年行けることができます。

子供と家族旅行に行くのはせいぜい小学校の間だけではないでしょうか。

中学生になれば、子供たちのほうが忙しくて日程が合わなくなってたりして。

 

和室はほんとうに必要???

ここまで書いておいて、ご両親が泊まるだけの和室なんて要らない!

と言いたいのではありません。

間取りは、長いスパンを考えずに、今だけの思いつきや、、安易に周りの人が言っているからとか、雑誌に書いてあるから、と言う決め方はしない方が良いということです。

私が相談を受けるときは、この家族旅行の投げかけをよくします。

そうすると、皆さんいろいろ思い描いて下さいます。

10年後のこと、20年後のこと、30年後のことも。

ほんとうに必要なのか?ご両親の年齢、子供さんの10年後、20年後も考えると・・・。

将来、同居の可能性は?

よくよく考えると、来客用に和室が必要なのではなく、比較的近いうちにご両親との同居を考えておかないといけないのかもしれません。

そうなると、間取りも変わってきます。

子供さんは、いつごろまで家にいると思われますか?いつまでいて欲しいですか?

親としては、いつまでも一緒に住んでいたいと考えられるかもしれませんが、それは本当に子供さんのためになりますか?

そこまで、いろいろと思い描いてみてください。

話が少し脱線してしまいましたが、来客用の和室はもちろん、ゴロッと横になるため、こたつで団らんのスペースもほしい、ご主人の居場所などを兼ねてのスペースとして等など、いろいろ考慮した上での間取りであればもちろんOKです。

そして、そこまで思い描けていれば、満足の間取りができるに違いありません。

実は和室というのは、何にでも使える万能性があります。

私自身、昔は数寄屋などの設計もしましたし、京都の古い町家のリノベーションなどもしてきたので、やはり畳のある空間は忘れていただきたくないのが本心ではあります。

ただ、生活様式の変化もありますし、限られた資金や制限のある空間を最大限活かしていただきたいのです。

都心部と郊外では、手に入れられる土地の広さや値段も違います。

都心部の住宅地では容積率、建ぺい率の関係で、少しでも面積を確保できる間取りを考えなければなりません。

 

家づくりは家族づくり

家をつくるということは、ただ箱をつくるのではありません。

特に注文住宅の場合は、マンションや建売ではできない、家族のあり方をご自身でつくる事ができるのです。

あるご家族は、来客用の和室についてじっくり考えられて、両親が泊まりに来られるのは子供が小学生の低学年の間と判断されました。

であれば、子供部屋はもともと、将来は2室に分ける予定で当面は一部屋の計画をしていたので、この部屋でおじいちゃんとおばあちゃんは孫と寝ればいい、部屋を2室に分けた後はご両親の年齢を考え、こちらから会いに行く、という結論を出されました。

これで、リビングを大きめに取ることが出来、建築費も落とすことができました。

落とした建築費は、別の使い方ができます。

また、身内ではない来客についても同じです。

友人が多いので、家に来てくれたときは泊まっていけるよう来客用の部屋が欲しい、と言われる方もいらっしゃいました。

よくよく話をお聞きすると、泊まれるようにと一生懸命なのはご主人だけ、奥さんの方は実はあまり歓迎していないご様子。

そりゃそうですよね、ご主人の友人が来て楽しく過ごすのはいいのですが、さすがにおおぜい泊まっていかれるとなると気苦労だけでなくストレスもたまるというもの。

もちろん、ご夫婦とも歓迎で意見が合っていればホームパーティーがしやすい設計にすれば良いと思います。

ちなみに、「パーティーハウス」と名付け、友人らがワイワイ集まりやすい住宅も建てさせてもらったこともあります。

このように、来客用の和室に限らず、家づくりはしっかり、じっくり、これからの生活に思いをはせていただきたいのです。

そして、ご家族でのきちんと話合いも必要です。

設計が始まってから話し合いをすると、なかなか折り合いがつきにくく、ご夫婦のうちどちらかが納得しないこととなり、必ずと言っていいほどまとまりのない家になります。

 

今だけを考えていては、いい家は出来ない

住まいをつくるタイミング、家族構成によって条件は全く異なりますが、家を建てる時はご家族の理想の将来も想像して間取りを考えてみてください。

将来のことなんてわからない、と思われるのは分かります。

ただ、分からなくても、将来の理想を思い描くことに失敗はありませんし、遠慮もいりません。

将来、リフォームしたらいいからと言われる方も多いのですが、住まいの構造、法律などの制限から、間取りを変えるようなリフォームは昔よりしにくくなる傾向にあります。

それは、間取りを変えると、耐震性能が落ちる可能性が高くなります。

これから、その傾向はますます強くなりますす。

将来、間取りの変更の可能性もあると判断されたら、その旨を設計の担当者に言っておきましょう。

構造をリフォームしやすいようにしておくことは可能です。

ただ、ハウスメーカーによっては規格があるのでちょっと対応は難しいかもしれません。

建築家、工務店なら相談に乗ってくれます。

これもあらかじめ、しっかりと考えておく必要があります。

おじいちゃん、おばあちゃんの為にも、新しい住まいでの過ごし方はじっくり検討していきましょう、後悔の残らないように。

来客用の和室という題名にしましたが、それに限らず、家づくりは家族の将来のことを考えるとてもいい機会です。

これを絶好の機会と思って、快適で居心地のよい生活のための家づくりに思いえがいてみてください。

その上で建てた住まいが、一番のいい家なのです。

いい家のススメでした。

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